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平成二十年三月二十八日
環境省告示 第三十四号

廃棄物処理施設整備計画

 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第五条の三第一項の規定に基づき、廃棄物処理施設整備計画を次のとおり定めたので、同条第五項の規定により公表する。


廃棄物処理施設整備計画

 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)第5条の3第1項に規定する廃棄物処理施設整備計画を、平成20年度から平成24年度までを計画期間として次のとおり定める。
 これまで我が国では、昭和38年度から平成14年度まで、廃棄物処理施設整備緊急措置法(昭和47年法律第95号)等に基づき、廃棄物処理施設の計画的な整備が図られてきた。その結果、生活環境の保全と公衆衛生の向上に寄与してきたところである。
 また、循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号。以下「循環基本法」という。)第15条に基づき策定された「循環型社会形成推進基本計画」においては、廃棄物処理施設は循環型社会の形成を図る上で不可欠なものと位置付けられ、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)第5条の2に基づき策定された「廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針」(以下「廃棄物処理法基本方針」という。)においても、循環型社会を構築する基盤として、廃棄物の適正な処理体制の確保は必要不可欠であるとされている。さらに、循環基本法の制定と併せて、廃棄物処理法の改正やリサイクルの推進に係る諸法の制定等が行われたことにより、循環型社会の形成に向けた取組を推進するための法的基盤が整備されつつある。
 このような状況の中、廃棄物処理施設の整備の目的は、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を前提としつつ、循環型社会の形成を推進することに転換が図られてきたところであり、平成15年10月に廃棄物処理法第5条の3に基づき策定された廃棄物処理施設整備計画においては、循環型社会の形成に向け計画期間中に廃棄物処理施設整備事業及び関連する施策により実現を図るべき重点目標と、当該目標の達成のために実施すべき廃棄物処理施設整備事業の概要を明らかにして、廃棄物処理施設の重点的、効果的かつ効率的な整備を進めることとされた。
 当該計画に定められた重点目標について、平成14年度から平成17年度までの推移を見ると、ごみのリサイクル率は16%から19.0%へ、ごみ減量処理率は95%から97.1%へ、一般廃棄物最終処分場の残余年数は13.8年から14.8年へと着実に向上しており、目標は概ね達成できる見込みである。しかしながら、一般廃棄物の最終処分場の残余容量は、1億5,250万立方メートルから1億3,302万立方メートルへと減少しており、地域によっては一般廃棄物の最終処分場の残余容量がひっ迫している場合があることから、引き続き、廃棄物の減量化、再生利用等を推進する必要がある。
 一方、汚水処理人口普及率は76%から80.9%へと向上したものの、浄化槽処理人口普及率については、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換が進んでいないことにより、7.8%から8.6%へと向上したにとどまっており、目標の達成はかなり困難な状況にある。また、し尿の衛生処理率については、平成19年2月にし尿等の海洋投入処分が禁止され、陸上処分への移行が完了したことにより、目標を達成した。
 また、循環型社会の実現に向けた3R対策の推進、とりわけ、各種リサイクル法に基づく取組や産業界の取組により、産業廃棄物の最終処分量は約4,000万トンから2,400万トンへと減少した。さらに、産業廃棄物の適正な処理を推進するため、公共関与による施設整備が進められつつあり、平成19年度までに廃棄物処理センターが19法人指定され、うち10法人の処理施設が稼働している。さらに、PCB廃棄物については、全国5箇所の拠点的広域処理施設において処理する体制が整備され、平成19年度までに4箇所でPCB廃棄物の処理が開始されている。
 こうした現状を踏まえ、平成17年に改正された廃棄物処理法基本方針に即して、廃棄物処理施設整備事業のより一層の計画的な実施を図るため、新たな廃棄物処理施設整備計画(以下「整備計画」という。)を定めるものである。

1.基本的理念

 (1) 廃棄物処理の3R化の推進
 廃棄物処理施設の整備に当たっては、その前提として、できる限り廃棄物の排出を抑制することを最優先に進めるとともに、生活環境の保全及び公衆衛生の向上のため、廃棄物となったものについては不適正処理の防止その他の環境への負荷の低減に配慮しつつ、再使用、再生利用、熱回収の順にできる限り循環的な利用(以下「適正な循環的利用」という。)を行い、こうした排出抑制及び適正な循環的利用を徹底した上で、なお適正な循環的利用が行われないものについては、適正な処分を確保することを基本とする。

 (2) 地域の自主性と創意工夫を活かした一般廃棄物処理施設の整備
 広域的かつ総合的に廃棄物処理施設の整備等を推進するために平成17年度に創設された循環型社会形成推進交付金制度により、市町村等の自主性と創意工夫を活かしながら、国と地方が構想段階から協働して循環型社会の形成を推進する。

2.廃棄物処理施設整備の重点的、効果的かつ効率的な実施

 (1) 市町村の一般廃棄物処理システムの3R化改革
 一般廃棄物の処理体制の確保に当たっては、廃棄物処理施設の整備と併せて、廃棄物の排出抑制、再生利用の取組を組み合わせて実施することが重要である。
 こうした考え方を踏まえ、市町村はその区域内における一般廃棄物の排出抑制に関し、適切に普及啓発や情報提供、環境教育等を行うことにより住民の自主的な取組を促進するとともに、分別収集の推進及び一般廃棄物の再生利用により、一般廃棄物の適正な循環的利用に努めるものとし、その上で処分しなければならない一般廃棄物について、適正な中間処理及び最終処分を確保するものとする。特に、一般廃棄物の排出抑制や再使用、再生利用の推進、排出量に応じた負担の公平化及び住民の意識改革を進めるため、一般廃棄物処理の有料化の推進を図るべきである。

 (2) 地球温暖化防止にも配慮した廃棄物処理施設の整備
 平成17年度における廃棄物分野からの温室効果ガスの排出量は、我が国の総排出量の約3.5%を占めており、また、京都議定書の基準年度である1990年度(平成2年度)と比較すると、29.5%増加している状況にあり、廃棄物処理施設の整備に当たっては、温室効果ガスの排出抑制に配慮することが極めて重要である。
 このため、廃棄物発電の導入、廃棄物発電のネットワーク化による安定した電力の供給、焼却施設から発生する中低温熱についての業務施設等での利用を進める。
 また、生ごみ、木くず等の有機物の最終処分場への直接埋立は、温室効果の高いメタンの排出を伴うことから、本計画期間中に原則として廃止するよう努めることとし、地域の特性に応じて、適切な再生利用等を推進する。

 (3) 廃棄物系バイオマスの利活用の推進
 生ごみ、木くず、し尿処理汚泥、浄化槽汚泥等の廃棄物系バイオマスの利活用は、循環型社会の形成だけでなく、温室効果ガスの排出抑制による地球温暖化の防止にも資することから、ごみ飼料化施設、ごみたい肥化施設、バイオディーゼル燃料化施設やメタンを高効率に回収する施設等の廃棄物系バイオマスの利活用のための施設の整備を推進する。
 この際、例えば、メタンを高効率に回収する施設と一定以上の熱回収率を有する廃棄物焼却施設とを組み合わせて、できる限りエネルギーを回収するといった多段階的な利用を含め、効率的な廃棄物系バイオマスの利活用を進める。
 また、廃棄物系バイオマスの利活用のための施設において、廃棄物系バイオマスの利活用を効率的に行うことができるよう、分別・収集の効率化を図る。

 (4) 効率的な事業の実施
   一般廃棄物処理施設整備事業の実施に当たっては、適正な循環的利用や適正な処分を進める上での必要性を踏まえ、他の市町村との連携等による広域的な取組を図るものとする。
 また、必要に応じてPFIの活用を行うことにより、社会経済的に効率的な事業となるよう努めるものとする。
 さらに、廃棄物処理施設整備事業の構想・計画・実施の各段階において、社会資本整備重点計画、土地改良長期計画など他の公共事業計画に位置付けられた事業とも密接に連携することにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を確保することを前提として、コスト縮減や工期の短縮など、相互の効率性の向上を図るとともに、相乗的な効果の発現を図るなど、効果的かつ効率的に事業を展開する。

 (5) 地域住民等の理解と協力の確保
   廃棄物処理施設の整備に当たり地域住民等の理解と協力が得られるよう、生活環境影響調査や住民等の意見聴取など廃棄物処理法又は環境影響評価法(平成9年法律第81号)に基づく手続を的確に実施する。
 また、分別収集区分や処理方法といった一般廃棄物処理システムの変更や新規導入に伴って廃棄物処理施設を整備する場合には、当該変更や新規導入の考え方と環境負荷面、経済面等に係る利点を、住民や事業者に対して明確に説明し、理解と協力を確保するよう努めるものとする。

 (6) 廃棄物処理施設の長寿命化・延命化
   廃棄物処理施設は、今後、維持管理や更新費用が増大することが見込まれ、かつ、機能面で社会の要請に応えられなくなっていくことが懸念される。厳しい財政状況の中で、コスト縮減を図りつつ、必要な廃棄物処理施設を徹底的に活用していくためには、いわゆるストックマネジメントの手法を導入し、廃棄物処理施設の計画的かつ効率的な維持管理や更新を推進し、施設の長寿命化・延命化を図る。
 また、既存の一般廃棄物の最終処分場について、過去に埋立処分された廃棄物の掘削及び減量化を行うことにより、新たな埋立処分容量を確保するなど、既存の廃棄物処理施設の有効活用を推進する。

 (7) 災害対策
   大規模な地震や水害等の災害時には、通常どおりの廃棄物処理が困難となるとともに、大量のがれき等の廃棄物が発生することが多い。そのため、平素より廃棄物処理の広域的な連携体制を築いておくとともに、広域圏ごとに一定程度の余裕を持った焼却施設や最終処分場を整備しておくことが重要である。
 また、廃棄物処理施設において、地震や水害によって稼働不能となることが起こらないよう、施設の耐震化、地盤改良、浸水対策を推進するとともに、震災等により発生したがれきを保管するための災害廃棄物用ストックヤードの整備を推進する。

 (8) 廃棄物処理施設整備に係る工事の入札及び契約の適正化
   廃棄物処理施設の整備に当たっては、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成12年法律第127号。以下「公共工事入札適正化法」という。)、公共工事の品質確保の促進に関する法律(平成17年法律第18号。以下「公共工事品質確保法」という。)等に基づき、競争性と透明性が高く、公正・公平性が確保されるよう契約され、長期的かつ総合的に品質と価格で優れた工事が施工されることが求められている。
   このため、公共工事入札適正化法の趣旨を踏まえ、入札及び契約の透明性・競争性の向上、不正行為の排除の徹底、公共工事の適正な施工の確保を図るとともに、公共工事品質確保法に基づき、総合評価落札方式の導入を推進する。
   地方公共団体等に対し、廃棄物処理施設整備に係る工事関係文書等の標準化、電子化、電子調達システムの導入等の実施を促す。
   併せて、国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)の趣旨を踏まえ、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に努めるものとする。
3.廃棄物処理施設整備事業の実施に関する重点目標及びその達成のため効果的かつ効率的に実施すべき事業の概要
  整備計画の計画期間中の廃棄物処理施設の整備については、次のとおり重点目標を設定し、その達成に向けて効果的かつ効率的な事業執行を推進する。
 全体目標:生活環境の保全及び公衆衛生の向上を前提として、廃棄物等の適正な循環的利用や適正な処分のための施設等を整備し、循環型社会の形成を図る。
 注)表中のごみ及び一般廃棄物最終処分場に係る指標値は、廃棄物処理法基本方針及び循環基本法に基づく循環型社会形成推進基本計画(平成20年環境省告示第33号)に即して設定したものである。

目標及び指標 事業の概要
 ごみの発生量を減らし、循環的な利用を推進するとともに、減量効果の高い処理を行い、最終処分量を削減し、着実に最終処分を実施する。
ごみ総排出量 ごみ処理施設の整備の前提として、排出抑制に関する普及啓発やごみ処理の有料化の推進等により、ごみ総排出量を削減する。
5,200万トン(H19見込み)
→約5,000万トン(H24)
ごみのリサイクル率 循環型社会の構築を目指し、環境への負荷の低減に留意しつつ、ごみの適正な循環的利用を推進するため、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成7年法律第112号)に基づく施策等を適切に展開することができるよう、ごみの種類に応じた分別収集体制の構築を図るためのストックヤード、リサイクルプラザ等のリサイクル施設について、地域の特性を活かした適切な整備を推進する。
20%(H19見込み)
25%(H24)
ごみ減量処理率 最終処分場の残余容量のひっ迫により、循環型社会形成推進基本計画において、一般廃棄物と産業廃棄物をあわせて最終処分量を平成27年度に約23百万トンとする目標が掲げられていることを踏まえ、ごみの直接埋立は原則として廃止するよう努めることとし、ごみのリサイクルに必要な施設や焼却施設、溶融施設等の減量化施設について、地域の特性を活かした適切な整備を推進する。
98%(H19見込み)
→概ね100%
一般廃棄物最終処分場の残余年数 ごみのリサイクルや減量化を推進した上でなお残る廃棄物について、生活環境の保全上支障が生じないよう適切に処分するため、最終処分場の設置又は改造、既埋立物の減容化等により一般廃棄物の最終処分場の整備を推進する。
平成19年度の水準(15年分)を維持する。
焼却せざるを得ないごみについては、焼却時に可能な限り発電を実施し、サーマルリサイクルを推進する。
ごみ焼却施設の総発電能力 循環型社会形成推進基本法に基づくごみの循環的利用及び処分の基本原則に基づいた上で、焼却せざるを得ない廃棄物について、最近の熱回収技術や排ガス処理技術の進展を踏まえ、一定以上の熱回収率を確保しつつ、熱回収を行う。
1,630メガワット(H19見込み)
→約2,500メガワット(H24)
し尿及び生活雑排水の処理を推進し、水環境の保全を図る。
浄化槽処理人口普及率 効率的な汚水処理施設整備を進めるため、地域の特性を踏まえた下水道、農業集落排水施設等との適切な役割分担の下、浄化槽の整備を連携して実施する。
9%(H19見込み)
12%(H24)