関連通知
一般廃棄物の溶融固化物の再生利用の実施の促進について(通知)
公布日:平成19年9 月28日
環廃対発第070928001号
各都道府県知事・各政令市市長殿
環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長
一般廃棄物の高温による溶融固化については、1200℃以上の温度でダイオキシン類を分解し、その削減に有効であるとともに、廃棄物の減容化に資するものである。また、溶融固化により得られた固化物(いわゆる溶融スラグ)は路盤材やコンクリート用溶融スラグ骨材などに利用することも可能であり、この場合には、最終処分場の延命化に一層効果的である。
一般廃棄物の溶融固化については、今後、さらにその実施を促進する必要があるが、とりわけ、溶融固化物の有効かつ適正な利用を促進していくことが望まれるところである。 溶融固化物の有効かつ適正な利用を促進していくためには、再生の段階において、その利用についても十分留意してこれを行うことが重要である。
このため「一般廃棄物の溶融固化物の、再生利用の実施の促進について」(平成10年3月26日付け生衛発第508号厚生省生活衛生局水道環境部長通知。以下「508号通知」という。)において、「一般廃棄物の溶融固化物の再生利用に関する指針」を示し、その実施の促進についてお願いしてきたところである。
今般、日本工業規格A5032(一般廃棄物、下水汚泥又はそれらの焼却灰を溶融固化した道路用溶融スラグ)及び日本工業規格A5031(一般廃棄物、下水汚泥又はそれらの焼却灰を溶融固化したコンクリート用溶融スラグ骨材)が制定されたことから「508号通知」を見直すこととした。
貴職におかれては、下記事項にも留意のうえ、別添の「一般廃棄物の溶融固化物の再生利用に関する指針」に基づく適正な再生利用の実施の促進が図られるよう、貴管下市町村を指導されたい。
なお、この通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言であることを申し添える。おって、「508号通知」は廃止する。
記
市町村が溶融固化した溶融固化物であって、別添の「一般廃棄物の溶融固化物の再生利用に関する指針」中の溶融固化物に係る目標基準に適合するものにつき、市町村が自ら発注した公共建設工事において利用される場合には、当該利用は、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い、個別の用途に対する利用価値及び市町村の意思に照らし、社会通念上当該用途において一般に行われている利用であり、客観的に利用価値が認められ、なおかつ確実に当該再生利用に供されるものであることから、廃棄物の処分に該当するものではないとして差し支えないこと。ただし、この場合、市町村においては、溶融固化物の利用に関する内容を施工条件として設計図書に明示するなど、溶融固化物の適正な利用について十分な配慮を行うこと。
また、路盤材及び加熱アスファルト混合物用骨材並びにコンクリート用溶融スラグ骨材に用いる場合は、それぞれ日本工業規格A5032又は日本工業規格A5031への適合性について、工業標準化法(昭和24年法律第185号)に基づく認証を受けることが望ましいこと。
( 別添)
一般廃棄物の溶融固化物の再生利用に関する指針(平成21年10月2日環廃対発091002001号の改正を反映済)
1 趣旨
溶融固化とは、燃焼熱や電気から得られた熱エネルギー等により、焼却灰等の廃棄物を加熱し、超高温条件下で有機物を燃焼、ガス化させるとともに、無機物を溶融した後に冷却してガラス質の固化物(以下「溶融固化物」という。)とする技術であり、重金属の溶出防止及びダイオキシン類の分解・削減に極めて有効である。
溶融固化物については、その品質が確保されれば、路盤材やコンクリート用溶融スラグ骨材等に利用することが可能であり、その利用を適切に進めることは、最終処分場の延命化を図るうえでも極めて重要である。
しかしながら、焼却灰等は鉛等を含有することから、生活環境への不安が溶融固化物の適正な利用を阻害する一因にもなっている。また、溶融固化物の安定的な利用先が確保されないことが、溶融固化の実施が進まない要因ともなっている。
このため、本指針は、生活環境の保全の観点から、溶融固化物の利用についても十分留意しつつ、一般廃棄物の溶融固化の実施に当たり遵守することが望ましい事項を定め、これに基づく溶融固化物の適正な再生利用の実施に資することを目的とする。
2 溶融固化物の用途
溶融固化物の用途としては、以下のようなものが考えられる。
(1) 路盤材(下層路盤材、上層路盤材)、加熱アスファルト混合物用骨材
(2) コンクリート用溶融スラグ骨材(コンクリート二次製品用材料含む。)
(3) 埋め戻し材、路床材等
(4)地中空間の充てん材
3 溶融固化物に係る目標基準
溶融固化の実施に当たっては、再生により得られる溶融固化物の利用についても十分留意することが重要であり、その利用により土壌や地下水の汚染等を生じることのないよう、その安全性が確実に確保されなければならない。
このため、生活環境の保全及び利用する用途に応じ要求される品質の観点から、溶融固化を行うに当たり満たすことが望まれる基準として、溶融固化物に係る目標基準を定めるものとする。
なお、この目標基準は、環境基本法(平成5年法律第91号)に基づく土壌の汚染に係る環境基準(平成3年環境庁告示第46号)や土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)に基づく指定区域の指定に係る基準等を考慮して制定された日本工業規格と同レベルのものであり、これを満たせば当該用途に用いる場合において安全と考えられるものである。今後、溶融固化物の製品としての規格が変更された場合や用途がさらに拡大された場合等にあっては、用途に応じた見直しを検討するものとする。
(1)路盤材、加熱アスファルト混合物用骨材
日本工業規格A5032に適合していること。
(2)コンクリート用溶融スラグ骨材
日本工業規格A5031に適合していること。
(3)埋め戻し材、路床材等
日本工業規格A5032の4.2(有害物質の溶出量と含有量)の基準に適合していること。この場合において、有害物質の溶出量及び含有量についての試験方法及び検査は、日本工業規格A5032の5(試験方法)及び6(検査)によること。
また、利用に当たっては、用途に応じて、強度、耐久性等の品質も満たす必要がある。
(4)地中空間の充てん材
一般廃棄物の溶融固化物が別紙の基準に適合していること。
4 再生に関し、遵守すべき留意事項
(1) 溶融については、あらかじめ対象となる廃棄物の溶融点を計測した上で、溶融炉内の温度を概ね1200℃以上の高温条件下に保つことにより行うこと。
(2) 溶融に伴い生じるばいじんについては、セメント固化等による無害化やいわゆる山元還元などにより適正に処理すること。
(3) 溶融固化物の冷却を水冷方式により行う場合には、冷却水の温度、pH、水量、水質等を適切に管理するとともに、冷却水の適正な処理を行うこと。
(4) 排ガスについては、バグフィルター等の高度の機能を有する排ガス処理設備により処理すること。
(5) 溶融固化物の品質を安定させるため、焼却灰とばいじんの割合を均一化するなど、廃棄物の成分に留意すること。
(6) 溶融固化物の安定的な利用先の確保に努め、適正な保管量を超えることのないよう留意すること。また、溶融固化物の利用先の確保については、土木部局等の関係部局とも密接な連携を図ること。
5 地中空間の充てん材としての利用に関し、遵守すべき留意事項
(1)一般廃棄物の溶融固化物が常態的に地下水に浸漬するおそれがないよう、地下水位より上部に充てんすること。
(2)施工地からの浸出液による施工地周辺の地下水への影響の有無を判断することができる二以上の場所から採取された地下水の水質検査を行い、かつ、記録すること。
この水質検査は、地下水位や地下水の流向を考慮し、一般廃棄物の溶融固化物の充てん利用を行った地点の周辺で充てんの影響を受ける可能性のある個所を少なくとも1箇所選定し、比較対象となる地域の水質を比較することにより行うこと。また、頻度については一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める省令(昭和52年総理府・厚生省令第1号)第1条第2項第10号等を参考とした上で、地域の実情に応じて実施されたいこと。
(3)公共建設工事の実施前に、施工予定地周辺の住民を含む利害関係者に説明会等を通じて当該工事内容の周知を図ること。
(4)施工終了後目安として2年が経過するまでの間、工事関係書類・記録について公衆の閲覧を可能とすること。
(5)施工地の周辺環境に生活環境保全上の支障(例えば地下水の水質異常等が考えられる。)が生じた場合にあっては、原因究明の上、速やかに掘返しや遮断工等の必要な対応を行うようにすること。
(6)一般廃棄物の溶融固化物の他の用途と異なり、一般廃棄物の溶融固化物が局所に集中的に利用されることも想定されるため、埋戻材等の場合と同程度の利用量とすることで、集中的な利用による環境への影響について配慮すること。
(7)ここに掲げる内容のほか、地域の実情に応じて必要な条件を検討し、公共建設工事を実施すること。
(8)地中空間への充てん利用を行う公共建設工事の施工を他人に委託する場合にあっては、施工事業者との間で役割及び責任について契約上明確化しておくこと。
(9)充てんする深度は、利用実績の最大深度及び掘り返しを行う場合の迅速な対応が可能な深度として、地表から5メートル以内を参考値とする。ただし、当該深度はあくまでも目安の数値であり、充てん利用に係る具体的な深度は、地域の実情等を踏まえ、各市町村において判断されたいこと。
別紙
市町村(又は施工業者)が使用する一般廃棄物溶融固化物の有害物質の溶出量は、溶融固化物単体においてJISK0058-1の5.による試験方法(受渡当事者市町村間の協議によって、JISK0058-1の6.に規定する方法によっても良い。)によって溶出試験を行い、下表の溶出量基準に適合するものでなければならないこと。
また、市町村(又は施工業者)が使用する一般廃棄物溶融固化物の有害物質の含有量は、溶融固化物単体においてJISK0058-2による試験方法によって含有量試験を行い、下表の含有量基準(T)又は含有量基準(U)に適合するものでなければならないこと。
市町村(又は施工業者)が使用する一般廃棄物溶融固化物について、使用する溶融固化物を供給する溶融炉ごとにロット(性状変更や溶融炉の運転条件の変更など品質管理上無視できない変更が生じた場合には別ロットとする。)を定め、地中に充てんする前に全ロットについて、試料を採取し溶出量及び含有量の試験結果を確認すること。なお、この方法による品質管理に代えて充てん工事の現場において十分なストックヤードを確保し、施工に用いる全量を代表する試料を採取して、施工前に試験値を確認することもできること。
表 一般廃棄物溶融固化物に係る溶出量基準及び含有量基準
項目 | 溶出量基準 | 含有量基準(T) | 含有量基準(U) |
カドミウム | 0.01mg/l以下 | 150mg/kg以下 | 450mg/kg以下 |
鉛 | 0.01mg/l以下 | 150mg/kg以下 | 450mg/kg以下 |
六価クロム | 0.05mg/l以下 | 250mg/kg以下 | 750mg/kg以下 |
ひ素 | 0.01mg/l以下 | 150mg/kg以下 | 450mg/kg以下 |
総水銀 | 0.0005mg/l以下 | 15mg/kg以下 | 45mg/kg以下 |
セレン | 0.01mg/l以下 | 150mg/kg以下 | 450mg/kg以下 |
ふっ素 | 0.8mg/l以下 | 4000mg/kg以下 | 12000mg/kg以下 |
ほう素 | 1mg/l以下 | 4000mg/kg以下 | 12000mg/kg以下 |
注:地中充てんの際の全充てん物に対する一般廃棄物溶融固化物の配合比率を30%以下とする場合には含有量基準(U)を用い、それ以外の場合には含有量基準(T)を用いることとする。なお、含有量基準(U)を用いる場合には、定期的に配合率の検査確認を行うこととする。