関連通知
使用済物品の適正な処理の確保について(通知)
公布日:平成22年10月21日
環廃対発第101021001号 環廃産発第101021001号
各都道府県・政令市廃棄物行政主管部(局)長 殿
環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課長
産業廃棄物課長
廃棄物行政の推進については、かねてから御尽力、御協力いただいているところである。
さて、近年、一般家庭等から排出される家電製品等の使用済物品を収集、運搬等する者が増加しており、その営業行為に対する苦情や問い合わせ等が都道府県や市町村に寄せられる事例が見られるが、それらの中には、排出者に費用負担を求める等、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)等に抵触する疑いのあるものも散見される。
本年8月には、使用済みの冷蔵庫を無許可で料金を徴収して収集運搬を行った事業者が、廃棄物処理業の無許可営業の疑いで逮捕され、さらに、収集した冷蔵庫を不法に投棄した疑いで9月に再逮捕されるといった事案も発生している。
ついては、下記事項に留意の上、必要な措置を講ずるとともに、貴管内市町村に対する周知及び指導方よろしくお願いする。
なお、本通知は地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言であることを申し添える。
記
都道府県知事又は市町村長は、廃棄物処理法に規定する一般廃棄物処理業者又は産業廃棄物処理業者等だけでなく、廃棄物であることの疑いのある物の収集、運搬又は処分を業とする者に対しても、廃棄物処理法に基づく報告の徴収(同法第18条第1項)及び立入検査(同法第19条第1項)ができることから、料金を徴収して使用済物品を引き取る場合はもとより、無料で引き取る場合や著しく低廉な価格で買い取る場合であっても、廃棄物であることの疑いがあると判断できる場合には、報告の徴収又は立入検査を実施すること。 実際の判断に当たっては、料金を徴収して使用済物品を引き取る旨がちらし等において明示的に又は暗示的に記載されている場合や、受け入れた使用済物品の適切な保管や品質管理がなされていない場合には、報告の徴収又は立入検査を積極的に活用して、実際に料金を徴収して使用済物品を収集、運搬した事実の有無や、収集した使用済物品が自ら利用又は有償譲渡できるものであるか否か等を確認すること。報告の徴収又は立入検査により無許可営業や不法投棄等の違反行為に該当する事実が確認された場合は、捜査機関に告発を行う等、必要な措置を講ずること。
なお、報告の徴収、立入検査及び刑事告発については、「行政処分の指針」(平成17年8月12日環廃産発第050812003号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長通知)第5、第6及び第12を参考とされたい。
(参考)
「行政処分の指針について」(平成17年8月12日環廃産発第050812003号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長通知)(抄)
第5 報告徴収(法第18条第1項)
1 趣旨
産業廃棄物の適正な処理を確保するため、都道府県知事は、事業者、産業廃棄物処理業者又は産業廃棄物処理施設の設置者等に対して、廃棄物の処理又は施設の構造若しくは維持管理に関し、必要な報告を求めることができるとしたものであり、これに対する報告拒否及び虚偽報告については罰則が適用されるなど法的効果を伴う処分であることから、これを積極的に活用されたいこと。そのため、報告を求める際には、相手方に対し、報告拒否あるいは虚偽報告に対しては刑罰が科され得ることを明示すること。
2 要件
(1) 都道府県知事は、この法律の施行に必要な限りは、事業者、産業廃棄物処理業者又は産業廃棄物処理施設の設置者のいずれに対しても必要な報告を求めることができること。また、廃棄物であることの疑いのある物の収集、運搬又は処分を業とする者に対しても、この報告を求めることができるところ、占有者において廃棄物でないと主張している物であっても、通常その物がどのように取り扱われているか(廃棄物として処理されているのが通例であるのか、有価物として取引されているのが通例であるのか)等により、社会通念に照らして廃棄物である可能性があると判断できる場合には、その物を「廃棄物であることの疑いのある物」と解し、報告徴収を実施して差し支えないこと。なお、「産業廃棄物の収集、運搬若しくは処分を業とする者」には、都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物処理業者に限らず、環境大臣から認定を受けた再生利用認定業者や広域認定業者、規則第9条又は第10条の3に基づき業許可が不要とされている者はもとより、無許可業者も含まれること。
(2) 報告徴収は、刑罰による間接強制によってその実効性を担保する制度であるから、報告を拒否された場合あるいは虚偽報告がなされた場合は、捜査機関と協議の上で告発を行うなど、厳正に対処すること。
(3) 明示的あるいは黙示的に報告を拒否する場合のみならず、報告内容に著しい報告漏れがあるなど、意図的かつ実質的な報告の拒否と判断される場合には、報告拒否と扱って差し支えないこと。
(4) 報告徴収は、都道府県知事が産業廃棄物の適正な処理を確認する上で必要不可欠な制度であるから、許可を受けた処理業者による報告拒否・虚偽報告については、たとえ初めての違反であっても、その悪質性は高く、直ちに事業停止処分を課すのが相当であり、さらに度重なる報告拒否・虚偽報告については、「情状が特に重いとき」に該当するものとして、業の許可を取り消すのが相当であること。
第6 立入検査(法第19条第1項)
1 趣旨
産業廃棄物の適正な処理を確保するため、都道府県知事は、その職員に、事業者若しくは産業廃棄物処理業者の事務所若しくは事業場又は廃棄物処理施設のある土地若しくは建物に立ち入り、廃棄物の処理又は施設の構造若しくは維持管理に関し、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において廃棄物を無償で収去させることができるとしたものであり、これに対する立入検査拒否、妨害及び忌避については罰則が適用されるなど法的効果を伴う処分であることから、これを積極的に活用されたいこと。そのため、立入検査を行う際には、相手方に対し、立入検査拒否、妨害あるいは忌避に対しては刑罰が科され得ることを明示すること。
2 要件
(1) 都道府県知事は、法の施行に必要な限りは、その職員に、事業者若しくは産業廃棄物処理業者の事務所若しくは事業場又は廃棄物処理施設のある土地若しくは建物のいずれに対しても必要な立入検査を行わせることができること。また、廃棄物であることの疑いのある物の収集、運搬又は処分を業とする者に対しても、この立入検査を実施することができるが、「廃棄物であることの疑いのある物」の解釈については、第5の2の(1)に準拠されたいこと。なお、「産業廃棄物の収集、運搬若しくは処分を業とする者」には、都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物処理業者に限らず、環境大臣から認定を受けた再生利用認定業者や広域認定業者、規則第9条又は第10条の3に基づき業許可が不要とされている者はもとより無許可業者も含まれ、これらの者の「事業場」には、無許可業者による不法投棄の現場や無許可設置施設も含まれること。また、不法投棄の疑いが相当程度確実に予想される場合において、生活環境の保全を確保するため立入検査を実施する必要性が認められる場合には、当該土地は無許可処分業者の事業場又は無許可設置施設に該当し得ることから法第19条第1項を根拠に立ち入り、必要な検査を行って差し支えないこと。
(2) 都道府県知事がその職員に、立入検査を行わせることのできる事務所若しくは事業場又は廃棄物処理施設のある土地若しくは建物は、当該都道府県の区域内にあるものに限られないこと。なお、他の都道府県の区域内にある事務所等に立ち入る際、特にそれが許可を受けた処理業者に係る場合は、当該都道府県と事前に十分協議されたいこと。
(3) 都道府県知事は、その職員に、廃棄物の処理又は施設の構造若しくは維持管理に関し、帳簿書類その他の物件を検査させること、又は試験の用に供するのに必要な限度において廃棄物を無償で収去させることができること。なお、立入検査の目的を達成するために必要な限度で写真撮影を行うことも許されること。また、「帳簿書類」には、経理的基礎を判断するための貸借対照表及び損益計算書、有価取引の真偽や事業支配の該当性を判断するための預金通帳、入出金伝票その他会計書類も含まれること。さらに、「その他の物件」には、えん堤、遮水シートなど廃棄物処理施設そのものも含まれ、「検査」としては、ボーリング調査や掘削調査も実施することができること。
(4) 立入検査の権限は、相手方が拒否した場合にその抵抗を排除してまで実施することは許されないが、刑罰による間接強制により適正、円滑な立入検査の実施を確保するとする法の趣旨に照らし、この場合においては、第5の2の(2)に準拠して厳正に対処されたいこと。なお、検査を積極的に拒否する場合でなくとも、実質的に立入検査ができない状態を積極的に生じさせるなど実質的に拒否又は忌避に該当すると判断される場合には、検査拒否又は忌避と扱って差し支えないこと。また、従業者等による事実上の立入検査拒否、妨害又は忌避行為も処罰の対象になり得るものであることから、この場合も、捜査機関と協議の上で対応されたいこと。
(5) 許可を受けた処理業者による立入検査の拒否・妨害・忌避に対しては、第5の2の(4)に準拠して厳格な行政処分をもって対処されたいこと。
第12 刑事告発
1 一般的留意事項
(1) 刑事訴訟法第239条第2項において、官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない旨規定されている趣旨を踏まえ、違反行為については積極的に告発を行われたいこと。
(2) 告発に当たっては、違反行為者の氏名又は名称、違反行為の日時(少なくとも何年何月ころ)、違反行為の対象となった廃棄物の種類及び数量、周辺の生活環境への影響、周辺住民からの苦情、違反行為の回数(少なくとも何年何月から何年何月にかけておよそ何回)、違反行為者への過去の指導状況などについて疎明資料をもってできる限り明らかにされたいこと。なお、告発に係る手続を円滑に進めるためにも、告発を行う前には、告発対象となる違反行為の内容等について捜査機関と十分に協議する必要があること。
(3) 違反行為者が逮捕されるなど刑事手続の対象となることにより原状回復が困難になるものと考えて告発を控える事案が散見されるが、違反行為について検察官に送致されたり公訴が提起された場合には、情状の酌量を求めるために原状回復を図る事例も見受けられることから、積極的に告発を行われたいこと。この場合、措置命令や納付命令書の交付は、遅くとも公判手続の段階までに行うなど速やかにかつ効果的にその履行が期待できる時期に実施されたいこと。
(4) 刑事手続の過程において原状回復が行われる事例も見受けられることにかんがみ、告発の有無を問わず、原状回復等の事後処理が必要となる違反行為に関する刑事手続が進行している場合は、都道府県としてこれを傍観するのではなく、都道府県警察、海上保安庁等はもとより、事件を担当する検察官とも連携を密にし、これら捜査機関の理解と協力を得た上で、違反行為者等による原状回復が促進されるように努めること。そのためにも早期の段階から捜査機関に情報提供を行うなどして連携を密にすることが重要であること。2 その他の留意事項
(1) 不法焼却、同未遂
(略)
(2) 不法投棄、同未遂
@ 最初に立入検査など調査を行った際に現場の写真を撮影するなど、不法投棄の証拠保全を図ること。また、現場周辺に駐車されている車の車両番号など実行者を特定するために有益と考えられる事情の記録に努められたいこと。
A 有価物と称する不法投棄については、それが廃棄物であること、保管と称する不法投棄については、それが処分であることを行政が積極的に判断し、投棄の実行者に必要な行政指導を行い、その指導の状況を記録しておくこと。
B 不法投棄の悪性立証のため、投棄された廃棄物の排出元の特定が望ましいが、罰条を統合した趣旨を踏まえ、排出元の特定が困難な場合であっても積極的に告発を行われたいこと。なお、これについては警察庁とも協議済みであること。
C 廃棄物を不法投棄現場に定着させるべく、身体、道具又は機械等を用いて、廃棄物を投げる、置く、埋める又は落とすなどの行為に着手した時点で、不法投棄の実行の着手があったものとして、不法投棄未遂罪に該当するものと解されること。具体的な行為類型としては、不法投棄現場において、ダンプカーの荷台操作等の一連の投棄行為を始めた直後に、警察官等による制止、監視等に気づいたことによる行為の打ち切り、ダンプカーの故障等の理由により、実際には廃棄物を投棄するに至らなかった場合等が考えられること。
(3) 不法投棄及び不法焼却目的運搬罪
具体的な行為類型としては、不法投棄が行われている現場付近まで不法投棄の目的で廃棄物を積載した車両を乗り入れ、投棄の順番待ちをしている行為、繰り返し不法焼却が行われている現場に焼却の用に供するための着火剤とともに廃棄物を搬入する行為等が考えられること。なお、平成17年4月1日から、自己運搬又は他者から受託した運搬を問わず産業廃棄物を収集運搬する場合にその運搬車に対し表示及び書面備え付けを義務付けたところであるが(令第6条第1項第1号イ)、例えば、当該表示が無く、覆いなどをして運搬している廃棄物を意図的に把握できないようにしているトラックが、山間部に向かって人気のない山道を走行している場合や、書面に示された排出事業場から処分施設への経路から大きく外れた地域で廃棄物の運搬が行われている場合などは、不法投棄等の目的で運搬されている可能性が高いことから、警察等関係機関と協力しつつ、厳正な対応に努められたいこと。
(4) 指定有害廃棄物の処理基準違反
(略)